1年7か月前、令和3年1月(現在令和4年8月)に直腸がんの手術を受けました。直腸に出来たがんを直腸ごと切り取り、肛門の3cm上と、切り取られた直腸の上の大腸をつなぎ合わせました。手術はうまくいき今のところがんの転移や進行はありません。がんの切除手術と同時に、一時的な人工肛門(パウチと呼ばれる便を溜める袋)をお腹の右に作り、3か月後にその閉鎖手術を受けました。一時的に人口肛門を作る理由は、つなぎ合わせた大腸の傷が完治するまで、そこにしばらく便が通らないようにして休ませるためです。これによってつなげた部分に便の漏れや傷の化膿などが起こらないように出来ます。
手術前後で大きく変わったことは、便を溜めておく直腸が無くなったことによる排便の回数と出かたです。閉鎖手術後5日目より肛門から便が出始め、その後しばらくは数え切れないほどの排便がありました。何度トイレに行っても、ほんの少し経つとまた行きたくなる。その繰り返しです。初め、便はひどい下痢で、お尻、肛門がただれ、しばしば痛みで便器に座れないほどでした。手術前に担当医師から渡された病状説明書には、排便機能は確実に低下します。漏便:ろうべん(便がもれること、電気が漏れるのは漏電)や排便回数10ー20回/日くらいになるのが普通。人工肛門のほうが管理しやすい場合もある。というようなことが書かれていましたがまさにその通りでした。また閉鎖手術後1年くらいは、いつ始まるか分からない排便のため紙オムツや、おむつや下着につける漏れ止めパッドが不可欠で、今でも夜間は念のために、パッドやちり紙、トイレに流せるペーパータオルを下着に付けることがあります。
開始と終了の読めない気まぐれな排便も、その後の食事、生活の改善と工夫で今ではかなり落ち着いてきました。便の出始めは比較的硬いバナナのようで、続いて少し柔らかいカリントウのような便が続き、最後の2、3回は緩いことが多く、これは大腸に入ってあまり時間の経っていない、つまり水分吸収の進んでいない便が出てきていると思います。要するに大腸の前部分、右手がわ(上行結腸や横行結腸前半部分)の便が出てきたということで、これで大腸の中がほぼ空になった証拠と考えられます。実際最後に緩い便が出た後は、朝から夜までほぼ排便がありません。
最後の数回はゆるい便で、特に水分を取りすぎた時(まれにコーヒーの飲み過ぎなど)にはかなり緩い下痢状態になります。この時にパッドやちり紙、溶けるペーパータオルを下着につけていないとズボンまで汚れてしまいます。
「最大の悪夢」は、トイレに行けない状況で水のような便を、職場で、電車の中で漏らしてしまうことです。この悪夢が現実化する恐怖のため、うつ病や閉じこもりとなり仕事を退職する人もいると聞いています。他の人のユーチューブを見ると、「とにかく決められた時間に他人と会う約束ができない」と訴える方がいらっしゃいます。私も悪夢が現実になることがとても恐ろしかったです。最初に仕事復帰した2週間はとにかく1日中「漏らさないだろうか」とそれだけが心配でした。そのため閉鎖手術後1年くらいは紙オムツ、パッド、着替えの下着、ズボン、タオル、ちり紙、トイレに流せる水に溶けるペーパータオルなど「お漏らしセット」を常備して仕事に出かけていました。このセットは1年間で数回だけ使いました。
閉鎖手術から半年、8か月経った頃になると、調子の悪い時にはもう少し回数が増えますが、夜10時頃から真夜中2時頃の間に3から5回と、早朝5時から8時頃までの3から5回のトイレ通いで、全部で6から10回くらいでほぼ終わり、朝8時半から夕方5時半まで週4日、自宅を出て仕事に行けるようになってきました。私が真夜中にトイレに行くようにしているのは日中に仕事に行けるようにする為です。「原因」と「対策」のところで述べます。そして8か月くらいから、昼間は排便があることはほぼ無くなり、昼休みにオシッコのついでに時々少量の便を出すくらいで、日中に仕事や生活に大きな支障がでるような排便はなくなりました。夜間から早朝も薬、食事時間や食事量、水分摂取量、トイレの特殊な使い方、オムツやパッドの工夫でほぼ便を漏らすようなことは無く、念のためパッドの上にちり紙や溶けるペーパータオルを貼り付ける程度で下着の汚れに対処できるようになりました。排便の状態が手術前に戻ったわけではありません。しかし、とにかく何とか生活ができるように、仕事に行ったり、体調が崩れないように生活全般に工夫をこらして暮らしています。そしてもっと安心して毎日が過ごせるように頑張って行こうと思います。
つまり手術前の状態にはほど遠いものの、仕事を何とか続けながら、少し運動を行えるほどに回復してきました。現在の状態になるまで、紆余曲折を経て学んだ私の様ざまな生活の工夫、改善、アイディア、またこの病気に立ち向かうための考え方や心得:こころえなどを皆さんに提供したいと考えています。そしてみんなでこの病気に立ち向かう智慧:ちえ を「対策」の項で提案、共有したいと思います。