直腸がんでもあきらめない 仕事も遊びも

2. 原因 ①頻便 b. 腸内細菌と頻便の関係

人口肛門閉鎖術直後にひどい下痢になるのは、手術の時に使用される抗生物質のためです。腸内細菌が一度死んで、腸内細菌叢がある程度回復するまで下痢や軟便が続きます。

腸内細菌には善玉菌、悪玉菌があると言われます。(本当は善玉、悪玉とはっきり分けられるわけではないのですが)腹痛や下痢を起こす悪玉菌の代表と考えられている「大腸菌」でさえも他の病原細菌が入り込んできた時にそれを攻撃するようなこともあります。善玉菌と言われる菌は栄養を体に取り込んだり、免疫を作る助けをしたり、ビタミンを作ったり、人間にとって好都合な作用をする腸内細菌のことです。ただし善悪は簡単には決められないということが今ではわかってきています。ところで、善玉菌と考えられている菌には酸素を嫌う「嫌気性細菌」が多いことが知られています。酸素があると生きられないと聞くと妙に思われるかもしれませんが、大昔の生命が誕生したころの地球環境を考えれば納得です。植物が光合成を行って酸素を作り出し、酸素を活動エネルギーに利用して生きていく細菌が生まれたのは、地球に生命が誕生してから何億年も経ってからのことです。嫌気性細菌は今でも火山の硫黄の中などにたくさん住んでいます。その嫌気性細菌のうち体に良い影響を与える、というよりも体の中に勝手に住み込んで人間と共生している腸内細菌がたくさんいます。大腸は酸素がほとんど無い場所なので、ビフィズス菌のような嫌気性細菌が住み着くようになったのです。さて酸素があっても生きられる大腸菌のような菌はあまり増え過ぎると腸内に炎症を引き起こして、下痢や腹痛の原因をなります。そこで「頻便」の影響です。何度も何度もトイレに入り、排便をすると、肛門から空気が入る、または空気に触れる機会が増えることになります。するともともと酸素のほとんど無い大腸に酸素が増えて、善玉菌に多い嫌気性細菌が住みにくい、住めない環境になり、代わって大腸菌など酸素に強い細菌が増殖して炎症が起こり、便は柔らかく、下痢になり、腸内細菌叢の多様性が失われ腸内環境が乱れます。そのためますます下痢や腹痛が続いてしまうのです。これは食事の内容でも同様なことが言えます。善玉菌のエサになる食物繊維の取り方が少なく、肉や炭水化物ばかり食べていると、大腸菌などが増えて腸内環境が悪化してきます。食事に野菜、豆類、果物など食物繊維を十分摂っていると大腸内に嫌気性の善玉菌が増えて良い腸内環境が作られます。それによって健康な体の状態を維持できるようになってきます。またそのような良好な食生活では「酪酸産生菌:らくさんさんせいきん」と呼ばれる腸内細菌が増えます。酪酸産生菌は体にエネルギーとして取り込まれる時、酸素を消費して、大腸内をますます低酸素状態にすることがわかっています。酪酸産生菌は免疫強化や筋力増強の働きもあるとされ、長寿に関係しているのではないかと考えられ研究されています。人工肛門閉鎖術の後はずっと頻便が続くわけですから、大腸に酸素が入り込みやすく腸内環境は乱れやすいことになります。腸内環境を良好に保つために、善玉菌のエサになる食物繊維や発酵食品を十分摂取するように心がけましょう。頻便や下痢の症状を改善するためにも健康な腸内環境を保つためにも野菜、豆類、果物、発酵食品などを十分取るように心がけ、野菜は煮て食べるようにして抗がん、免疫効果を上げましょう