直腸がんでもあきらめない 仕事も遊びも

3. 対策 「筋トレと食事でガンをやっつけろ」b.「筋トレの効果と食事」 「マイオカインとがん」「砂糖とがん」

マイオカインとは、骨格筋:こっかくきん(筋肉)から分泌される生理活性物質:せいりかっせいぶっしつ(サイトカインとも言います)の総称。ギリシャ語のmyo:マイオ(筋)kine:カイン(作動物質)を組み合わせて作られた造語です。骨格筋がマイオカインを分泌し、現在まで発見されたマイオカインは数十種類に及びます。マイオカインは骨格筋が運動や活動によって収縮する時分泌され全身の臓器や組織とコミュニケーションを取り、機能を調節しているのです。日常的に動いている人は健康や若さを保つマイオカインが分泌する一方で、動かないでいると老化や病気の予防に役立つマイオカインが減少し、筋肉の萎縮を進めるマイオカインが増えてくる。つまり良くも悪くも作用するのです。IL-6、イリシンなどのマイオカインは糖や脂肪の代謝を高め、インスリン分泌を高めたり脂肪細胞を燃えやすい褐色細胞に換え、体を健康にします。またIL-6やIL-4などは筋肉の合成や修復にかかわって働き、逆にミオスタチンというマイオカインは筋肉の萎縮を進める逆の作用をします。運動、筋トレを行って体に良い作用をするマイオカインを増やし健康を増進することが大切です。

マイオカインとがんの関わりも注目されています。米国の調査報告では、大腸がんリスクを減らすための生活習慣として「身体運動」が唯一確実に効果的」とされました。そこに関わるマイオカインはSPARKスパークと言われ、運動すると筋肉中で増えたSPARCが血流を介して腸に達し、大腸がんの芽になる細胞を認識しアポトーシス(プログラム細胞死)に導くことが動物実験や細胞の培養試験(人間の体内でのメカニズムはまだはっきりしていませんが)により確認されています。日本人男性を対象にした調査でも、身体活動量が増加するにつれ、結腸がん(大腸がん)になるリスクが減少するという結果が出ています。身体活動量が最も少ないグループに比べ(リスク1)、最も多いグループでは結腸がんのリスクが0.58、つまり40%以上下がるという報告もあります。このメカニズムとしては、運動を行っていると便通が良くなり便中の発がん物質を結腸にとどめる時間が短くなることや、マイオカインの働きによるがんのアポトーシス促進、血糖値低下によるがん細胞増殖抑制などが考えられています。

またそのほかにも運動、筋トレの免疫への影響があげられます。筋トレ直後から血液中に免疫細胞ナチュラルキラー細胞NKC)が運動に反応して増加します。NKCは全身をパトロールするリンパ球で、がん細胞を見つけて攻撃し除去する働きがあります。以上から

運動、特に筋トレ大腸ガンの予防、進行抑制に効果があると考えられます。

「糖類とがん」

2020年10月のイギリスがんリサーチの論文で「砂糖とがんの関係」について大切なことがいくつか述べられています。まず最も重要な点は「砂糖はがんの原因になるか」という点です。

ブドウ糖は生物のエネルギー代謝の基本です。人間も同様にブドウ糖がないと生きていけない活動もできないことになります。糖類にはさまざまな形があります。最も単純な形態は、ブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)のような単一の分子です。これら単糖類の分子は、2つ1組でくっついたり、長い鎖状になったりします。これらの分子の結合体はすべて炭水化物であり、体の主なエネルギー源となります。我々のよく知る糖類は甘い単糖である角砂糖です。正式にはショ糖(スクロース)でブドウ糖と果糖の結晶です。角砂糖は精製されています。天然の原料、テンサイなどから糖分のみが取り出されています。加工されないハチミツなどには単糖類が多く含まれています。これらはブドウ糖と果糖からできるほぼ純粋な砂糖です。

糖類の鎖が長くなると、甘みが失われ、水に溶けなくなります。これらは多糖類と呼ばれ、炭水化物を多く含む米、パン、パスタ、ジャガイモなどでんぷん質」の食品になります。我われが口にするものには、何らかの形で糖類が含まれます。我々の体を構成する細胞はブドウ糖によってエネルギーを得ています。ブドウ糖は細胞の基本的な燃料であり、炭水化物が取れない場合には脂肪やタンパク質をブドウ糖に変えてエネルギーにします。細胞が働くためには糖類が必要だからです。がんは細胞の病気なので糖類とがんがここで関係してきます。

がん細胞は早いスピードで増殖するため、多くのエネルギーを必要とします。つまりがん細胞はたくさんのブドウ糖を必要とするのです。ただしがん細胞を作るためには糖類だけでなく、アミノ酸や脂肪など他の栄養も必要です。がん細胞が大量のブドウ糖を必要とするのであれば、食事から糖類を取り除けば、がんの成長を成長を抑えられ、発生も防げるはずです。残念ながら健康な細胞もブドウ糖を必要としています。健康な細胞には必要なブドウ糖を与え、がん細胞には与えないようにする方法はありません。「糖類抜き」の食事をすることでがんになるリスクが下がったり、がんと診断された場合の生存率が上がったりするという証拠はありません。つまり糖分ががんの原因であるという証拠はありません。炭水化物を極端に制限した食事をすると、食物繊維やビタミンを多く含む食品が取り除かれてしまうため、長期的には健康を損なう可能性があります。特にがん患者の場合は、治療によって体重が減少したり、体に大きな負担がかかったりするので、食事制限による栄養不足が回復の妨げになったり命にかかわる場合もあります

糖類ががんの原因でないならなぜ心配するのか。

糖類を抜いてもがんの治療の助けにならないならば、なぜ糖類の多い食品を控えるよう進めるのでしょうか。それはがんのリスクと糖類に「間接的な関係」があるからです。糖類をたくさん取り続けると太りやすくなりますが、「太り過ぎや肥満は13種類のがんのリスクを高める」ことが証明されています肥満が喫煙に次いで、予防できる最大のがんの原因となっています。2019年に発表された研究では、体重に関係なく、多くの砂糖入り飲料を飲む人ほど、がんのリスクがわずかに高まることが見つかっています。太る原因としては果物や牛乳など食品に自然に含まれる糖類や、全粒粉や豆類などのヘルシーなでんぷん質でなく遊離糖類(または添加糖類)が問題となります。添加糖類を減らすには最大の糖類供給源となっている砂糖入りの飲料を減らすことです。炭酸飲料やエナジードリンクなどには1本だけで1日の推奨上限を超える糖分が含まれているものがあります。これらの余分なカロリーは体重を増加させますが、栄養上の利点はありません。また大量の添加糖類が隠れている食品は多くあり、これらの食品を望まずに取ってしまわないように、2018年の英国の砂糖税のような政府による対策も必要です。また果物や牛乳、ヘルシーなでんぷん質の食品は炭水化物を多く含みますが、これらは健康を維持するのに不可欠な「食物繊維」多くを含み、丸ごとの果物や野菜、全粒粉や豆類を多く食べることが大切です。食物繊維は自然の糖類をゆっくり消化するのを助け、健康的な体重を維持するのに役立ち、大腸がんのリスクを減らします。以上から言えることは、

「砂糖はがんの直接的な原因ではない」しかし

「甘いものの取りすぎによる肥満はがんの危険性を高める」

「添加糖類を含む食品をさけ、自然でヘルシーな食品から糖分を取るようにする」