直腸がんでもあきらめない 仕事も遊びも

2.原因 ②便意があった時にトイレまで我慢できない原因、メカニズム「肛門様弱し」

「手術の難しさによりお腹のあちこちを傷つけてしまう」

近年、直腸がんの手術において、Milesマイルズ:人名、イギリスの外科医マイルズさんが開発した)手術など人工肛門造設:じんこうこうもんぞうせつ(永久人工肛門を作る)手術に代わって、前方切除術(体の前方からがんになった直腸を切って残った大腸をつなげる手術)など自然肛門(自分の肛門)を温存:おんぞん(残す)する手術が行われるようになっています。それに加え、腹腔鏡下手術:ふくくうきょうかしゅじゅつ(お腹に小さい穴を開け、鉗子:かんし(手術用のハサミ)を差し込んでスコープ(単眼鏡)でお腹の中をのぞき、モニターを見ながらする手術)が行われることが当たり前になっており、体への侵襲:しんしゅう(傷つけること)が少なくなり、手術後の回復を早めることが出来るようになってきました。また自然肛門が温存されることにより、手術後のQOL (生活の質) を向上できるとも考えられています。

しかし一方で、骨盤の内がわの難しい手術となるため腹腔内:ふっくうない(お腹の中の空洞)の損傷:そんしょう(傷)も生じやすく、リンパ節郭清:りんぱせつかくせい(リンパ節を切除する、悪いものをすっかり取り去り清める)に伴う神経損傷や狭い骨盤内の手術操作のため、肛門括約筋:こうもんかつやくきん(便がもれないように肛門を締める筋肉)や骨盤底筋:こつばんていきん(骨盤の底にあり、弱ると尿や便の漏れにつながる)などへの損傷により術後排便障害便意の喪失、失禁、衣服の汚れなど)に悩まされる人も増えてきている。このような説明が専門書の中にもよくあります。

要するに、がんの部分から上の直腸部分とリンパ節(がんの転移にはリンパ行性と血行性があり、リンパ節にがんが転移してるかもしれない)を切る広範囲の切除を、狭い骨盤の中で、それも最近では当たり前になった腹腔鏡下手術で行う。当然、鉗子は手のようには器用に動かせず、腹腔鏡で見える範囲も限られるので、手術はかなり難易度が高く、相当熟練が必要です。そして熟練した医師でも、やはり手術の時にはお腹の中にあちこち切り傷をつけやすく、神経や筋肉を傷つけたりすることがあり、それに関係する排泄機能が低下します。便が漏れないように肛門を締める肛門括約筋の機能が低下したり、働かなかったりしてトイレが我慢できないこともよくあります。また同じ理由で漏れそうなこと、漏れてしまったことを感じる感覚が低下したり、なくなったりもしやすいのです。

「そりゃ、たまらんわ」

また何と言っても直腸やS状結腸など便を溜めておく主要な場所無くなったり、小さくなったりするわけなので、貯蔵庫が小さくなればすぐいっぱいになるのは当たり前です。

「内肛門括約筋がない? いえ、私にはあります」「外肛門括約筋を鍛えろ」「おしりを左右から絞り上げるように力を込めるんだ、ジョーー!」by 丹下段平

便がもれないようにおしりを締める筋肉の代表選手に、内肛門括約筋:ないこうもんかつやくきんと外肛門括約筋:がいこうもんかつやくきん、があります。内と外は体の中心から内がわ、外がわに位置することを示します。肛門から見ると、外肛門括約筋は肛門に近い所にあり、内肛門括約筋はその内側で肛門から見ると上にあります。内肛門括約筋は自律神経によりコントロールされる不随意筋:ふずいいきん(自分の意思でコントロールできない筋肉)で普段、便がもれないように軽く閉じていて、排便の時に短時間だけ緩みます。外肛門括約筋は随意筋:ずいいきん(意思でコントロールできる筋肉)で、漏れそうなときお尻を締めて排便を我慢する筋肉です。ですから内肛門括約筋は鍛えられない、外肛門括約筋は鍛えられます

「どんなに鍛えてもそんなに長くは我慢できない」「下痢ならせいぜい20秒くらいだろう」「でも鍛えるぞ、オー」

ただし、飲みすぎた翌日や生食の魚介にあたってひどい下痢になった時のことを思い浮かべれば分かるように、我慢出来る時間はそんなに長くはありません。溜められる量、機能ともに低下する手術後ではなおさらです。ところで肛門からみて低い所にある部分を切る手術が低位前方切除術:ていいぜんぽうせつじょじゅつ、肛門にもっとも近い低い部分を切るのが超低位前方切除術:ちょうていいぜんぽうせつじょじゅつ、と言います。超低位前方切除術では肛門にとても近い部分で直腸を切るので、手術のあと、直腸がほとんど残っていません。排泄機能への影響が上部で切るより大きいことになります。また、がんより上の部分(体の中心に近い部)はがんが転移している可能性があるのでドクターは「転移だけはさせるものか」と直腸の外側で少し上のリンパ節を含めてかなり大きく切除する(切ってみないとわからない。がんかどうか、転移しているか判明するのは切り取った後の病理検査後です)ので転移している可能性を考慮してとりあえず広い範囲を切る。よって直腸全部、時にはS状結腸も切り取られることになり、便を溜める機能が明らかに低下します。ちなみに私は、超低位前方切除術で、一時的人工肛門造設術、人工肛門閉鎖術を受けました。直腸はリンパ節を含めて全部切り取る手術でした。幸い内・外肛門括約筋は残してもらえました。S状結腸は約半分切除されています。

ただの愚痴ですが「直腸」という言葉を省いた理由をどなたか説明してくれませんか?

この低位や超低位前方切除術という手術の名前には腑に落ちないところがあります。超低位はとても肛門に近い所、すぐ上で、つまりとても低い所で、前方、つまり体の前方から行う手術であることがわかります。体の前からとても低い部分を切除、切ることはわかります。でも何か変だと思いませんか?そうですこの手術名には主語、つまり「何を」切るのか、が説明されません。切るのは直腸です。ですから本当は「超低位直腸前方切除術」となるはずです。

「聞いてないよー」「聞いたけどピンとこないですよ」

実は私もこの手術名でどこを切られるのか、実感がないまま手術を受け、術後に何とも言えない喪失感を感じました。切られたことは仕方がないと思っています。「ちゃんと説明したじゃないですか。ほらここに承諾書もありますよ」と言われそうですが。でも超低位前方切除術を行うと言われ「あー直腸がなくなるんだー」ということがはっきりと認識されていませんでした。説明を受けて、同意書にサインもしています。でも直腸を全部摘出されることが完全に認識されないまま、手術を受けています。患者は手術前にはとても混乱しショックを受けています。医療を30年以上仕事にしてきた私がそうなのですから、まして知識のない一般の方にとってはさぞかし、と思います。もっとも私の専門は運動学・筋肉や神経で内臓は門外漢ですのでがんや手術についての知識は一般の人とそんなに変わりません。そりゃお前がちゃんとドクターの話しを聞いていないからだとも言われそうですが。

「なんでそんなにいっぱい切るの?」「転移するんじゃ」

ですからまあ切る方にも様々な事情はあるでしょうが(今回コロナへの対応に振り回されて手術予定に大きな影響があったことも確かですし、「コロナで病院が忙しくなってきているから、今のうちに早くやったほうがいいよ」という病院の雰囲気を感じて私に焦りがあったのも事実です)ただ次のように説明してもらえるともっと覚悟が出来て、術後の「なんかうまいこと言われて切らされた」感じや、「聞いてないよ」が減るのではないですかねぇ。説明①直腸がんはがんの部分より体の中心に近い部分に転移することが多い。②がんは血行性とリンパ行性(浸潤性もあるが)に転移する。だから直腸の体に近い部分、がんの出来た部分より直腸全部とその上の大腸部分とまわりのリンパ節切り取る。③直腸やその上のS状結腸はうんこを溜める役目をするので、直腸やその上を取るとうんこが溜められなくなり、手術後、普通は一日1回で終わる排便が10回から20回くらいに増える。つまり手術後数か月は少量の便が長い時間かけて何度も出てくる。全部出しきるまでに数時間もかかったり、一晩中トイレにこもったりすることもある。排便の回復はとてもゆっくりであり、時間をかけて少しずつ戻ってくるが、完全にもとに戻ることはほとんどない。ただ、いろいろな工夫をすることで社会生活に戻っている人もいるので、参考にすることができます。

「しばらくすると上行結腸から横行結腸にかけてや横行結腸から下行結腸などで便はかなり溜まるようになるし、要するに大腸全体で便秘するみたいに溜まるようだ」

でも数か月くらいするとゆっくりですが、だんだん便が大腸にためられるようになってきます。完全に元通りになることはありませんが、排泄のやり方や薬、紙おむつやパッド、食事の取り方など様々な工夫で、生活を改善して仕事復帰している方もいらっしゃいます。特に「腸じん」さんという理学療法士がこの手術を受けて、生活改善の様子や方法をブログに書かれているのでぜひ参考にしてみてください。(えへへっ)

「ISR(内肛門括約筋切除術)、人工肛門は絶対嫌じゃー」

肛門の筒部分(肛門管:こうもんかん、という超低位よりもっと下の部分)に出来たがんを取り除き、しかも出来るだけ自然肛門を残すための手術です。「人工肛門は絶対嫌じゃー」という人向きの手術です。ただし内肛門括約:かつやく筋が無くなるので(肛門が活躍:かつやくできなくなる・・・・しゃれです。すいません)やはり内肛門括約筋があるよりは漏れやすくなります。また肛門に近い手術ほど便を溜める機能も便意:べんい(うんちが出そうなことを感じ取る感覚)もなくなりやすく、前に述べた、手術のためにお腹の中の神経や筋肉を傷つけやすいということも加わって、「ためられない」「止まらない」か○○えび○ん、「出そうなこと、出たことを感じにくい、感じない」というふうになりやすいです。

「外肛門括約筋を鍛えましょう」by ドクター

手術前後に「お尻を締める練習をして」とドクターに言われますが、次のようなところからきています。「失禁と衣服汚れ」という生活の質を低下させる2大困りごとの原因は、外肛門括約筋が弱ることだと医学論文に書かれていますので先生方は「鍛えろ」とおっしゃるのです。(鍛えた時と鍛えない時の生活困難の有意差:ゆういさ(統計的な違い)に「エビデンス(証拠)があるのでやってください」ということです)つまり「鍛えると漏れが少なくなりますよ、ちゃんと証拠もありますよ」ということです。でも漏れるまでの時間をちょっとだけ長くできますが、漏れなくなるわけではありません。でも私もやってますよ、お尻筋トレ。お尻の締め方が分からない時はお風呂の時にお尻に指を入れて締め付けてみると分かります。あとお尻と下半身の筋トレにスクワットが最適です。お尻をかかとまで下げるフルスクワットでなく、あまり膝を曲げないハーフスクワットで十分です。イスの座面にお尻を触れて座らずに立ち上がるような感じで行ってください。ゆっくり動きを止めずにやると効果的です。(スロートレーニング、略して「スロトレ」と言います。流行ってますよ)また、膝を痛めないように膝がつま先より前にいかないようにしてやって下さい。

目標、ハーフスクワット一日100回。私はトイレに入るたびに10回、朝20回、というふうに小分けにしてやってます。

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