直腸がんでもあきらめない 仕事も遊びも

1.困ること 直腸がんの手術を受けて困ること②便意があった時にトイレまで我慢できない

「日本大腸肛門病会誌」など専門家の論文を読んでみると、直腸がん前方切除術を行った直腸手術後の患者の 「QOL:生活の質」を妨げる排便の異常で、特に問題となるのは incontinence:失禁(尿、便を便器以外の場所でもらすこと)と soiling :汚す(下着や衣服を汚すこと)とあります。

便意があった時にどれくらい我慢できるか?強い便意があった時にと言い換えたほうがいいでしょうか。水分をかなり多めに取って水っぽい便が出そうになった時や、便が出始めて大腸に溜まった便がほとんど出切って大腸の初めのほう、つまり上行結腸の終わりや横行結腸の始まりにあった、まだ水分が大腸に余り吸収されていない柔らかい便が出てきた時は、我慢しようとしても閉鎖手術から1年4か月経った今でも、、私の外肛門括約筋無力です。

でも、手術を受ける前、病気が判明する前でも、刺し身に当たってひどい下痢をした時や、しこたまビールを飲んだ次の日にトイレに駆け込むようなことはありました。今と違うのは大腸にたまっている便がどの程度出たのか、まだ残っているのか、完全に出し切ったのか、はっきり分かったことでしょう。つまりこれ以上は残っているか、いないかがお腹の感じで、ほぼ完全に分かったことです。ですから下着を汚すようなことはありませんでした。ところが閉鎖手術後は終わったと思っても少しするとまた出るということを何度も繰り返すようになりました。もうそろそろ終わったかなという時にまた出始めるので、油断していると下着やズボンを汚してすべて着替えることになります。こういう時は赤ちゃんに戻ったようで大人としてのプライドがひどく傷つけられます。

これがあんまり続くと、「うつ状態」になったりして、よく言われるように、「永久人工肛門のほうがかえってコントロールしやすい」ということになるのだと思います。私はそれでも、やむを得ない場合、つまりがんや健康状態、年齢、ADLの低下、認知症などほかの合併症のために仕方なく永久人工肛門を選択する場合を除いて、もし可能なら閉鎖手術を受けるほうが良い」と思います。私も3か月間、人工肛門をしていました。やはり困るのはパウチ(便を溜めておく袋)が夜間寝ている時にパンパンに膨らんで便が漏れてくることや、風呂に入る時に便が濡れて外れそうになったり、公衆浴場でパウチが恥ずかしくて隠したくなること、そのせいで公衆浴場へ行くのにかなり抵抗を感じること、自宅でも湯船につかるのにとても気を使うこと、パウチをつけるテープで皮膚がただれて痛みが出てくること、お腹に力を込める筋トレがしにくいこと、経済的なこと(パウチ用品は高額、障害認定されると補助されるが)などです。

人工肛門閉鎖手術を受けた後、麻酔が切れて気が付いた時に右のお腹にパウチが無くなったのを見た時は本当に嬉しかったことを今でも鮮明に覚えています。さてトイレまで我慢できない場合にはどうしたら良いでしょうか。どんな難問にも必ず解決策はあるはずです。トイレまで我慢できない原因はがんを切除した時の手術によって、お腹の中が傷つきやすく、排便に関わる神経や筋肉を痛めることが多く、特に肛門括約筋が弱るために我慢することができなくなっていることが一つあると思います。また、便意や排便の感覚も低下することで漏れそうになっていることや漏れていることが感じにくくなっていることもあると考えられます。特に内肛門括約筋の切除術を行った場合には我慢することはかなり難しいと言われています。

このように我慢が難しい場合には排便の時間を調節し漏れても良い時間に排便できるようにすることが最も大切で、特に内肛門括約筋を手術で取ってしまった方や排便の感覚が感じにくい方にはとても重要です。これには対策の項で述べているように、食事の回数、量、薬での調整をしながら、生活に影響を及ぼさない時間にトイレに入り、さまざまな工夫で短時間になるべく多くの便を排泄して、日中の仕事や家事の時間には大腸の中をほぼ空にしておく作為的な便秘状態を維持させることが大切です。それが大きな安心につながり、日中の生活を楽に過ごせるようになるでしょう。トイレの心配をせずに暮らせることは我々のような人工肛門閉鎖術を受けた人間にとって大きな幸せです。私の場合は夜間や早朝に排便をなるべく終わらせ日中仕事中に排便が起こらないようにしました。詳しい方法については対策の項を参考にして下さい。

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